実家の仏壇に私が高校の頃、いたづらに彫った「こっぱ仏」が3っ並んでいる。
大・中・小と、こけしのような形の「こっぱ仏」である。
自分で彫ったことすらとっくの昔に忘れていたが、母はそれを大事にとっておいてくれたらしい。
私が木彫をやるようになって、あらためて仏壇の中の3つのこけしと対面し、我ながら「へー!」と思ったものである。
当時実家は100年以上続いた古い藁ぶき屋根の家だったが、それを取り壊し建て替えているところだったから、庭には
木っぱがいっぱいあつた。それを拾って彫ったのだろう。
その時の大工の棟梁は70代か80代のかなり年配の方だったと思うが、かくしゃくとしていた。
棟梁の墨付けのしぐさは美しかった。ピーンとひとはじきすると、あっという間に繊細な線があらわれた。
棟梁が目測すると零コンマ以下の狂いまでもわかった。定規で測るより正確らしい・・・・・。
建前の時は五色の、のぼりが並び棟梁と施主である父が屋根に登って上棟式が行われた。
祝いの餅やみかんがまかれ、集まったご近所じゅうの人達がこぞって拾い、酒を飲み、ごちそうを食べ,棟上げを祝った。
父は農閑期になると他の人達が出稼ぎに行くところを大工として働いた。
はじめは大工見習いだったが、我が家の建て替えの時には、大工として我が家の半分以上はちちが建てたと言う。
あの頃のちちの墨壺は何処へ行ったろう・・・・・・・。折に触れ思う。
もちろん私は実際に使うことなど出来ないが、もし残っていたら是非手元に置いて眺めていたいと思う形である。
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